さいしょでさいごのコトバ


終電で初めての土地に行き、始発で戻ってくるという経験はわたしが大人になったという証拠。

お金がない大学生カップルみたいに早朝の牛丼屋さんに行くことや、煙くさいコートを纏って眠気まなこで電車に揺られること。きっともう、二度と起こらない出来事。一回きりのこと。偶然やさみしさや、優しさが重なった綺麗な夜だと思った。冬の冷たい空気と、どんより明るくなっていく空の色。


阪急電車の中でこの日記を書いています。もったりした苔色の座席が好きです。すきま風が冷たいです。
いつでも誰かに掬われる。わたしは誰かを掬える人間に成れているだろうか。
空が繊細なグラデーションです。やさしいお迎えの光のようです。


死ぬことなんて、死にたいなんて考えたことのない、考えられない友人と紅葉狩りに行った。
そのアッケラカンとした返答にわたしは安心する。彼女の悩みは、いつでも、バターの包み紙みたいだ。
おみくじを引いたら凶だった。彼女は大吉だった。


結ばれた凶は、置いてけぼりの凶だ。少し疲れたのだと思う。
わたしが求めることをやればいいのだと、素直な男の子は言う。




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